上下斜位のあるかたの場合、累進レンズの装用を躊躇する、という人がいます。
第一眼位(正面視)での斜位量と、
下方回旋した時の斜位量が変わることがある、
というのが主にその理由ですが、
実際に変化することが多いです。
上下斜位だけではなく、水平斜位も変わります。
水平斜位が変化する理由は、
内直筋と外直筋が水平に付いているに対して、
上下の直筋は垂直ではなく、内転するように斜めに付いているから、
ということが挙げられますが、
上下方向の変化は、これといった理由が見当たりません。
そして、これは、
ヘリングの等量神経支配の法則(Hering's law of equal innervation)
という観点からも矛盾しています。
下方回旋した近見時の斜位量は、計ることはできます。
米国式21項目検査では、フォロプターを使い、
水平方向を見た眼位でしか近見眼位の検査は出来ませんが、
こういう偏光方式の近用検査装置を使うことで、下方回旋時の斜位量の測定をすることはできます。

(大きさがわかりやすいように、隣にスマートフォンを並べました)
しかし、現状では、
遠用部と近用部でプリズム量を変えることのできる累進レンズは存在しません。
某大手メーカーが開発中ということなので
将来的には使用できるようになるかもしれませんが、
現在を生きる私たちには、現在の技術の範囲内で対処しないといけないわけです。
つい最近の話ですが、
遠見時に4.5△(プリズムディオプトリー)の上下斜位があり、
ワース4灯で周辺融像に複視を呈しているかたの累進レンズを調製しました。
遠見の複視を消すのは簡単なのですが、
近見時にはあきらかに斜位量が減っており、
遠見のプリズム量では近見時にやや融像に困る、という状況でした。
何年やっても、この仕事は勉強の毎日です。
たぶん、永遠に・・・・ですね。
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