大変良く下調べされておりまして、少々驚きました。
量販店の、不勉強な店員よりも知識が豊富なのではないかと思います。^_^;

そのレンズは、大阪・岸和田市にあるホッタレンズ製の
「1.7 AE-1 SV」というものです。
屈折率1.70のガラス製非球面レンズで、特筆すべきはそのアッベ数の高さです。
高屈折レンズにも関わらずアッベ数52もあります。
アッベ数と言うのは、過去にも触れましたが、「色収差」に関連します。
http://optpal.blog.fc2.com/blog-entry-378.html
屈折率・比重・アッベ数は光学レンズの三大要素と言われており、
どれかを上げるとどれかが下がると言う微妙な三角関係にあるのですが、
この素材だけはアッベ数が突出しています。
色収差に敏感なかたでも、このレンズなら色のにじみを気にすることは無いと思われます。
さて、昔を振り返ってみます。
記憶があいまいな部分もありますので間違っていたら申し訳ないです。
AE-1が世に出たのはもう30年も前のことでしょうか?
当時はまだプラスチックの創成期で、ガラスが主流でした。
屈折率は1.8のものはありましたが、1.9はもう少し後だったと思います。
ちょうど同じ時期に流通していた1.70の高屈折ガラスレンズ、
NIKON ニューハイパワーというレンズの同度数帯のものがあるので比較してみます。

Sph-4.25 Cyl-1.00 のニューハイパワーの前面カーブは約5、

Sph-4.75 Cyl-0.50 のAE-1 SVの前面カーブは約2です。
当時は、プンクタールやらチェルニング曲線という理論に基き、
レンズカーブの強かった時代です。
レンズカーブをフラット化して大口径化すると、周辺部でゆがみが発生しました。
そこでレンズを非球面化して非点収差を抑えたのが非球面レンズです。
非球面レンズの技術は、すでに白内障手術後に用いるレンチキュラーという
強度凸レンズで市販されていました。
凹レンズでも、HOYAがアルファルックスというレンズで市販していたのではないかと
思うのですが、ガラスの凹レンズで非球面化したのはホッタさんが最初だと思います。
HOYAも1.6の非球面ガラスレンズをほんの一時だけ発売していましたが、
ガラスの需要減に伴い廃版になりました。
プラスチックレンズの普及に伴い、ガラスレンズの需要は激減しました。
それでも、強度近視のかたや、農業に従事されているかたなど、
ガラスレンズには屈折率の高さや耐傷性、耐熱性という優位さもあります。
今でも、少ない需要にも関わらず、ガラスレンズの製造を続けてくださるホッタさんに感謝です。
金沢市西念4丁目19-26 プレイヤード102 OptPal(オプトパル)
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