もうひとつ、近視の原因として着目されているものに、軸外収差による遠視性デフォーカスがあります。
眼は、中心部分を明視するために調節を働かせますが、その結果、周辺部分では網膜後方へのピントのズレが発生すると考えられております。

(眼軸に沿った入射光(青線)は網膜上に結像し、眼軸外からの入射光(緑線)は網膜後方に結像)
この周辺部での遠視性デフォーカスを改善するために、同心円状にレンズの周辺に向かって屈折度数が弱くなっていく(プラス側に移行する)構造、
あるいは二重焦点のものが考案されました。
こちらも複数の論文が公開されております。
Liu Y, Wildsoet CF. (2010)
The Effect of Two-Zone Concentric Bifocal Spectacle Lenses on Refractive Error Development and Eye Growth in Young Chicks
Sankaridurg, Padmaja; Donovan, Leslie; Varnas, Saulius; Ho, Arthur; Chen,Xiang; Martinez, Aldo; Fisher, Scott; Lin, Zhi; Smith, Earl L. III; Ge,Jian; Holden, Brien.(2010)
Spectacle Lenses Designed to Reduce Progression of Myopia: 12-Month Results
海外の報告では一定の効果がみられたということですが、
以下の通り、日本で行われた多施設共同研究では、効果を証明する結果は得られませんでした。
Effect of spectacle lenses designed to reduce relative peripheral hyperopia on myopia progression in Japanese children: a 2-year multicenter randomized
以前は、Myopia Control Lensとして、国内でも販売されていたこともあったのですが、
この共同研究の結果を受けてかどうかは存じませんが、現在は販売されておりません。
現在は、臨床試験で効果があったとされる香港では流通しているようですが、
論文にもあるように、特に運動時など、周辺視力の劣化があり、快適に装用できるレンズではないようです。
尚、国内でMyopia Control Lensを販売していたメーカーからは、
現在は、前回のブログ記事に記載のような、調節ラグを減らす目的のレンズが出ております
しかしながら、近視の進行を予防するという趣旨の記述はなく、
成長期の子供のために特別設計されたレンズ、という説明に留まっています。
軸外収差による遠視性デフォーカスは、
調節ラグと同じく、近視の子にも、そうでない子にも起こっています。
やはり近視の発生や進行には、これらとは別のファクターの関与もあると考えるのが自然です。
現在、近視進行に一定の抑制効果があるものとして、
オルソ-K、遠近両用コンタクトレンズ、低用量の硫酸アトロピンの点眼が知られております。
ただし、長期的な副作用等の可能性も考えられ、現在も研究が進められております。
ご興味があれば、検索すれば、医学論文や、眼科医のHPなどで情報が得られると思います。
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