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こちら金沢市のメガネ店OptPal(オプトパル)です

プラスチックレンズの「ひずみ」

プラスチックレンズの「ひずみ」についてのお問い合わせがありました。

拙ブログからリンクしている「メガネのハマヤさん」にも同様のメールが来ているようです。
匿名のメールについては、申し訳ないですが、返事は一般論や簡潔な内容で済ませております。

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メーカーから納品されたレンズに関して、
「レンズにひずみが無いことを確認して、わずかでもひずみが
あればメーカーにレンズを再度作らせます。」
というメガネ屋さんがあります。

小見さんは、メーカーから納品されたレンズにひずみがある
場合、どのようにされていらっしゃいますでしょうか?

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以下は、メールへの返信では無く、当ブログ用に書きおろしたものです。



ここで言うところの「ひずみ」というのは、
レンズ成型の段階で発生する残留応力による副屈折です。
プラスチックレンズの場合、モールドとガスケットを組み合わせた空間に
レンズのモノマーを高圧で注入し、熱硬化させて成型します。
モールドを外したら再加熱して均一にしますが、
これをアニーリングと言って、この段階で応力集中が抜けます。
その後、洗浄して、コーティングなどの加工をして仕上がりますが、
完成したレンズを「ひずみ計」と呼ばれるもので観察すると、残留応力と思われる色ムラが見えることがあります。

190721_2.jpg

カメラの重さで、シャッターを押す時に手ブレが発生してややボケています。

赤丸の個所に白い部分が見えますが、これが残留応力です。
モノマーの注入口や、コーティングの際のホルダーの跡だと思います。

>わずかでもひずみが
>あればメーカーにレンズを再度作らせます。

言葉通りに受け取るならば、この「ひずみ」も当然再作させるのでしょうかね。
この残留応力の部分は、玉型加工すれば、綺麗に無くなりますので私は問題ないと思うのですが。
と言うか、納品されるレンズには、ほぼ確実にこれはあります。
こんなことでいちいち再作させていては、お客様にいつまでたっても納品できませんし、
メーカーからも取引を断られてしまいます。


屈折率1.60のプラスチックがアッベ数36から42に上がった時、
具体的に言うと、モノマーが、三井東圧の「M6」から「M97(だったと思います)」に変わった時、
とあるメーカーのレンズが「ものすごく」変形していまして、
アニーリングの際に、耐熱性の高さが災いして、成型したレンズが重力で垂れてくる、という現象と説明を受けましたが、
その説明の際、「工場長」という立場のかたが、
「規則的に垂れているから実用上問題ない」という趣旨のことを私に言いまして、
その時以来、このメーカーとは全く取引がありません。
各メーカーのレンズを取り寄せて確認したところ、2社に同じような現象があり、
問屋を通じて情報を伝えましたが、全く返事がありませんでした。
当然、そのメーカーとも以降の取引は止めました。(現在進行形)

納品されたレンズに、大きなひずみがあったというのはこれくらいで、
現状では見え方に問題のあるような残留応力のあるレンズはほぼ見ることはないです。
(多分、出荷時の検査でハネられます。)



で、この「ひずみ」というのをどうやって調べるかというと、
「ポラライザー」と「アナライザー」と呼ばれる2枚の直行した偏光板の間にレンズを置きます。

メガネ部品の販売会社から、「偏光ひずみ計」というのが売られていますが、
精度の良い偏光板が2枚あれば、自作も出来ます。

当店では、市販の「偏光ひずみ計」も置いてますが、
バックライトのより明るい自作のものを使うことがほとんどです。
こっちの方が見やすいし、視野も広いし、レンズをひずみ計に当てて傷付けるリスクも無いからです。


さて、応力集中があると、
本来黒く見えるはずの部分が白く見えたり、色が付いて見えたりします。

190721_1.jpg

強度数のレンズ、乱視やプリズム度が大きいレンズ、加入度の大きい累進レンズの場合、
レンズ自体の屈折で、光が折れ曲がり、歪んでいるような模様が見えます。
矢印の先4か所に、うっすらと白い部分が見えますがこれがそうです。
これは「副屈折=ひずみ」ではなく、レンズ自体の屈折なので無罪だと考えます。
これを返品して再作させたら、メーカーが可哀想です。(笑


納品されるレンズの残留応力よりは、玉入れ加工時の応力集中のほうがよほど大きいです。

190721_3.jpg

この画像は、処分するフレームとレンズを使ってわざと応力集中を発生させたものです。
お客様に納品するものでは当然ありません。
虹のように色が付いている部分はかなり大きな応力集中が起きている箇所です。

この応力集中をゼロにできれば良いのですが、
この応力によってレンズがフレームに固定されるという側面も持っています。

応力集中をゼロにするとレンズが簡単に外れてしまいますので、
通常は、視界に問題が無い程度に、うっすらとした応力をレンズの周辺部にだけ残す感じで加工します。
(上の画像程度の応力集中があっても、それが原因で不具合が発生する可能性は低いですが)


ゼロにするのは無理ではないのですが、
それにはテナックスという両面テープ式の溝セルを使うか、
コーキングするような感じでシリコン剤で固定するなどの工夫が要ります。
しかし、汚れが溜まりやすい、糊が浸み出してきてレンズが汚れるなどの欠点がある上に、
気温によるレンズの収縮、あるいは膨張
経年変化によるレンズの収縮、あるいは膨張などという問題もありまして・・・・

要するに、寒い時期はレンズが縮み、暑くなるとレンズは膨張します。
経年変化でCR39という素材は縮みますが、それ以外の素材は膨張することが多いです。

加工時に応力集中をゼロにしても、
寒いとレンズが外れやすくなり、暑いと応力集中が発生する、ということです。
経年変化もしかり。


フチなしフレームでは、固定のための穴の周辺にかなり大きな応力が発生しますし、
ナイロールフレームでは応力集中は少ないですが、一部のレンズ(フィルム式の偏光レンズ)には使えませんし
凸レンズではレンズが厚くなったり、バリ(小さな欠け)が発生したりと、
なかなかに面倒なのがこの応力集中というやつです。


この応力集中は、ガラスレンズではほとんど起こりません。
起こる位に締めつけるとレンズが欠けてしまうでしょうしね。^_^;
アクリルやトリアセテートのような光弾性の低い素材を使えば良いですが、
それでは屈折率やアッベ数に支障があります。

まあ、私なんかよりも、頭の良い研究者や技術者が考えて、
現在のレンズ、フレーム、加工機械などを作り上げて来たわけです。
色々な大小の要素があって、より大きい要素を重視して今の結果になったのでしょうから
応力集中の問題は小さな要素だったということかと思います。
その中で、出来るだけのことをしてお客様に良い状態で納品するのが私たちの仕事になります。


もし、応力集中を徹底的に取って欲しい、というご希望がございましたら
可能な限りそのようにします。
それによって起こるデメリットはもちろんご説明いたします。


金沢市西念4丁目19-26 プレイヤード102 OptPal(オプトパル)

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