ロウ付け(ロー付け)台を新しくしました。

ロウ付けというのは、金属フレームの接合部が折れたときに修復する技術で、
従来ならば、眼鏡技術者の必修の基本的な技術です。
マイクロトーチ(小さなガスバーナー)でロウを溶かして、接合部をくっ付けます。
しかしながら、金属フレームの素材がチタンになってからは、ほとんどやる機会がなくなりました。

チタンフレームの場合、空気中でロウ付けしようとすると、表面が酸化してしまい
銀ロウというロウ付け物質が素材表面に乗りません。
チタンフラックスとチタン用ロウ板を使って、チタン材の表面に被膜を付けて、
その被膜同士をロウ付けすることで、一応、店頭での修理も出来ないことはないですが、
強度や見た目の面で具合がよろしくないために、まあ、やることはありません。
今なら、往復の輸送も含めて最短3日ほどで、レーザー溶接してくれる修理工場があるので、
そちらに頼んだ方が強度も見た目も良いです。
一度、店頭で余計なことをすると、修理工場に送っても修理不能になってしまう恐れもあります。
フレーム素材が、サンプラチナ、洋白、ニッケルクローム合金の頃は、
クリングス折れ(鼻パッドを付ける金属の足)や、蝶番のコマ折れなど、
それこそ毎日のように頻繁にやっていましたので、今でもやろうと思えば出来るはずです。
ただ、今回このロウ付け台を新調したのは、ロウ付け用というよりも、固定用です。
外箱はこんなでした。
THIRD HAND TOOLそう、まさに第三の手です。この役目が欲しかった。
紫外線硬化樹脂などを使って応急処置をする時に、
くっつけるものを両手に持ってしまうと、UVライトを操作できません。
これがあると、片方、もしくは両方を台に固定すれば、手が空きます。
拡大鏡も付いてますが、ダブルコンベックスの収差のひどい奴なので、
あまり使い道はないかと思われますが、
レンズを自分で入れ替えれば使えるようになるかもしれません。
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お客様より、使用中のメガネが、破損や古くなったとの理由で処分を依頼されることがあります。
まとめて産業廃棄物として処分するのですが、ただ捨てるのももったいないので、
加工や修理の練習材料にすることがあります。
ほとんどは鼻盛りの練習ですが。
鼻盛りは、
実際は余りやることは無いです。
盛らないといけないケースは、幼児用、あるいは、海外製(欧州向け)のプラスチックフレームに限られるからです。
基本的に、鼻盛り無しには掛けられそうもないフレームは仕入れませんので、
当店では幼児向けにたまに行うか、金属足が折れたときに固定鼻に交換修理する事がある程度です。
で、むしろ、頻繁に行わない作業なので、たまにやっておかないと腕が鈍ってしまいますので、
こういう機会に練習して
おさらいしているのです。
(失敗しても問題ないですし、失敗が経験に繋がります)

踏んでしまって、両蝶番の折れたフレームです。
蝶番埋め込みで修理可能ではありますが、メーカーが前枠のみの出荷に対応しておりましたので、
費用と納期を考えて前枠交換することになり、この前枠は不要となりました。

で、付いていたマッシュ型の鼻パッドは、食い切りニッパで外しました。


断面をヤスリ、ゴム砥石、耐水ペーパー、バフで磨いて平らにして
左に2本足ガードを圧着して、右にアセテートの載せパッドを溶着しました。

他にも、外したパッドを、いろんなパターンで他の練習用フレームに付けてみました。
これはアセテートやセルロイドフレームだから出来る事です。
アセトンと酢酸アミールの混合液で素材表面を溶かし、溶着しています。
アセテート、セル以外のプラスチック素材ではできません。

当店には、TR-90という東アジア製の廉価材質のフレームは取り扱いがないので、
たまたま廃棄予定の箱に入っていたテンプルにクリングスを埋め込んでみました。
しっかり土台が埋まる深さまで穴を掘っておかないと、折れてしまうんですね。
2回ほど、圧着しようとしたらパキッと折れてしまいました。
3回目は慎重に深さを見ながら掘って成功しましたが、
やっぱりアセテートやセルに比べると扱いにくい素材ですね。
こういう記事を書くと、
他店で購入されたプラスチックフレームの鼻盛り依頼が来たりします。
が、過去にも書いておりますが、
メガネがズリ下がる原因は、ここじゃないことが圧倒的です
→
鼻盛りの依頼→
クリングスを付けて欲しいまずは、テンプルの開き、耳の後ろの曲げ具合、マトモなフィッティングをしてもらってください。
これは、販売した店、販売員の義務であり責任です。
フィッティングの下手な従業員も多いと思います。
マトモなフィッティングになるまで、何十回でも何百回でもやり直させましょう。
そうすれば、少しは学習して巧くなっていくはずです。
店、販売員にとっても、良い勉強の機会になるわけですから、損は無いと思うのですが。
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昨日、瞬間接着剤について書きましたが、
ちょうどこんな事例がありました。

当店で3年ほど前に販売したプラスチックフレームの左テンプルが折れてしまいました。
ポリアリル・サルフォンと思われる国産の超弾性樹脂です。
よく見ると、瞬間接着剤でくっ付けようとした跡が見えます。
残念ながら瞬間接着剤ではくっ付きません。
鯖江の、眼鏡製造工場から職種転換して修理専門になった工場があるので、
そこに送ると修理は可能ですが、納期も掛かりますし、修理費がかなり高いです。
破断の接着の場合、その接着強度にも多少の不安が残ります。
製造元にパーツがあれば、交換するのが納期的にも費用的にも一番なのですが、
最近は、国産フレームといえども、交換パーツを用意しているメーカーは少ないです。
東アジア製の廉価なフレームでは全くと言って良いほど期待できません。
今回は、無事、メーカーに部品の在庫がありまして、至急送って貰うこととなりました。
さて、これを応急的に処置する場合、
ある種のモノマーを使って繋ぐことは出来ないことは無いですが
瞬間接着剤でもエポキシ系の接着剤でも、単体でくっ付けることはほぼ無理です。
接着剤に含まれる有機溶剤で、素材自体が溶けたりクラックが入ったりすることも考えられます。

瞬間接着剤のカスを丁寧に取り除いて(これに一番時間が掛る)
紫外線硬化樹脂で固めてみました。
折れた部品同士を接着するのではなく、樹脂で繋ぐ形になります。。
これでは、数回掛け外しをしているうちに、樹脂が折れてしまいます。

さらに熱収縮チューブで補強しました。
シリコンやPEのチューブなどもありますが、強度的にはこのドイツ製のPVC製チューブが上です。
これで普通に扱う分には、数日くらいなら持ちます。
修理部品を手配するにしろ、新しいメガネを新調するにしろ、
その間は使える状態には持っていけます。
メガネが壊れた場合は、
瞬間接着剤やボンドなどを使わずに、
速やかにお買い求めの店に持ち込んでください。
瞬間接着剤のせいで、治るものも治らなくなったり、
余計な費用が掛ったりする結果になることもあるのです。
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家庭には、仕事と愛は持ち帰らない主義なのですが、(笑
昨夜、寝ている時に、仕事の夢を見てしまいました。
バネ蝶番の交換修理の夢です。


バネ蝶番とはこういうものです。
テンプルの付け根にバネを仕込んで、テンプルが外に広がる構造になっています。
側頭部を締め付けないように出来ておりますが、
錆びたり、衝撃で破損することがしばしばあります。

スライド式ならぼ、補修パーツがありますので簡単に交換できます。
どうということも無い簡単な作業なので、
これだけなら、夢を見たところで起きたら忘れてしまう程度のものですが、
夢には続きがありまして・・・・
テンプルの外側に付いていた七宝飾りが外れかけていたので、
瞬間接着剤でくっ付けようとしたら、
接着剤がたくさん飛び出て、レンズに付着しててんやわんや、という事態となり、
そこで目が覚めました。
経験したことはないので、なぜそういう夢を見たのかは不思議ですが、
何とも後味の悪い夢でしたので覚えているというわけです。
これまで、壊れたメガネを素人修理をしようとして、
瞬間接着剤がレンズに付いてしまったものを持ち込まれたことが多々あります。
アセトン、瞬間接着剤の剥離剤などで取れることがありますが、
その際にレンズのコーティングを傷めたり、レンズがひび割れたり、ということは、
それこそ沢山見てきています。
破損したメガネは、瞬間接着剤で修理や応急処置できることは限定的です。
ほとんどの場合出来ないといっても良いです。
却って事態を悪化させる原因になるだけですのでご注意ください。
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お客様より、クリングス足(鼻パッドの金属足)折れの修理をお預かりしまして、
修理工場に出したものが帰ってきました。
足の折れ方によって修理方法が変わり、
折れた足をそのまま使ってスポット溶接する場合と
足をそっくり交換する場合があります。
前者ですと、元の足を使いますので、色はそのまま、溶接部分が銀色になるだけですが、
後者ですと、新しい足を使いますので、足全体が銀色になります。
どちらになるかが微妙な折れ方でしたが、
この色なら自分で塗れると判断して部分塗装は依頼せずに、溶接(ロー付け)修理のみにしました。
塗装をすると費用も倍くらい掛かりますし、納期も数日加算されてしまいます。
で、帰って来たフレームは、クリングスを交換されており、片方の足だけ銀色に輝いていました。
で、当店で部分塗装を行います。

部分塗装用のタッチペンです。
眼鏡工具メーカーのタッチペンもありますし、自動車用のものもあります。
成分表を見る限り、ほぼ同じものに関わらず、眼鏡工具メーカー販売のものは倍以上の価格がします。
まあ、ぼったくり価格ですな。修理の度に、新しい色を追加するなどして、かなり増えてきました。
混ぜて色を作ることもできます。
水色とかピンクのような明るい色は難しいですが、暗めの色なら大体このくらいあれば作れます。
皮膚に直接接触する部分には使えませんが、そうでない部分のカラー補修には充分な耐久性があります。
まあ、仮に剥がれてきても、また塗れば良いだけです。

今回は、トヨタのレッドマイカという色と、艶消しブラックを混ぜてエンジを作りました。
向かって左が元の足、右が今ほど塗ったものです。
正直なところ、絵を描いたり色を塗ったりという美術的な分野は得意では無いのですが、
今回は、自分で言うのも何ですが、見分けが出来ないほどバッチリ塗れていました。
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