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こちら金沢市のメガネ店OptPal(オプトパル)です

経年劣化

前ブログ記事に関連して。

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私物です。
もう5~6年前は使っているでしょうか。
仕事用のレンズではないので、主に休みの日に使っています。

耳介に触れる部分が白くなっていて、表層が荒れています。
材質はアセテート。

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こちらは同じメガネの反対側のテンプル部ですが、使い始めて2年ほど経った頃に、
モダンの曲げを微調整しようとしたときに折れてしまいました。

モダン修理

しばらくシリコンチューブを使って誤魔化していましたが、
今はアセトンで表面を溶かして割れを埋めています。
合う部品があれば交換したいのですが、なかなかサイズや色の気に入るものが見つかりません。


で、何が言いたいのかというと、
メガネフレームのプラスチック部分は、経年で劣化します。
皮脂や整髪料、お化粧などが付着したままだと、置いておくだけで劣化しますし、
ただ置いてあるだけでも、長期間のうちに乾燥、紫外線などで自然劣化していきます。
ある程度劣化してしまうと、調整の際には白化・折損・ひび割れなどのリスクが高まります。

ですので、フィッティング調整は、劣化していないうちに、つまり購入時にしっかりやっておくことが大事なのです。






金沢市西念4丁目19-26 プレイヤード102 OptPal(オプトパル)


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他店購入のプラスチックフレーム

先ほど、
「他店購入のメガネのフィッティングを有償でやってもらえるとホームページで見た」
と、男性が来店されました。

このページのことです。
お引き受けの際の条件等は、こちらにしっかりと明記しております。
    ↓
フィッティング調整



お持ち込みのフレームは、お引き受けいたしかねる条件であるプラスチックフレームでした。
しかも、ケースからお出しになられた瞬間に、
全体的にツヤが落ちていて新しくはないもの
と見て取れました。
アセテートではなくセルロイドのハンドメイドもの、という雰囲気もありました。
サイズも小さそうで、そもそもお顔のサイズにも合ってないんじゃないかな???



他店購入のプラスチックフレームのフィッティングをお引き受けいたしかねる理由は、
兎にも角にも加熱と破損のリスクです。
どこかを曲げるときは必ず加熱をします。
加熱で燃えるなんてミスはさすがにないですが、表面にしわが寄ることは起こり得ますし
曲げる際に、白化する、ひび割れすることは、新しくないフレームであれば常に起こり得ます。

また、テンプルの開き幅を調整するときはレンズを外す作業が必要ですが、
レンズが入ったまま加熱は出来ないので(レンズがダメージを受けます)、
常温で力任せに外すことになります。
レンズが固く入っていれば外れませんし、無理に外そうとするとフレーム、レンズ共にダメージを受けます。
私が調製する(作る)メガネの場合、常温でも外せるようにサイズを決めて加工しますが、
他店の場合はその限りで無いかもしれません。
また経年変化でレンズが膨張していたり、
セルロイドフレームは経年変化で締まってきますので、レンズが外せないことも良くあります。

レンズが外せない場合のテンプル開き調整では、
アセチシートの貼り合わせや、テンプルを削ったりという不可逆的侵襲を伴う加工が必要になります。
失敗しても元に戻せないリスクを伴う、ということです。
もっとも、メガネの修理や調整は必ず不可逆的なダメージを与えているので、
最小限の手間に抑えることが必要です。



おそらく、今回のフィッティングを引き受けたとしたら、
レンズを外す
加熱してテンプルの開き幅を調整(広げる)
それに伴いテンプルの屈曲点の位置、下方・内方への曲げの調整
などが必要になっていたと思われます。

テンプルの曲げ調整で、白化したりひび割れが起きた場合など、
ごめんなさい
で済めば良いのならお引き受けしても良いんですが
わざと壊したと思われることは無かったとしても、
わざと壊したと思われていると、私がそう思うことが嫌なので、お引き受けいたしかねる次第です。



尚、プラスチックフレームのフィッティングですが、
購入からなるべく早くフィッティングを完成させることが大事です。
使用が1年以上になると、表層が結構荒れてきます。
荒れた状態で曲げ直すと、白化、ひび割れが起きやすくなります。
購入したら、なるべく早めに、満足できる形になるまでフィッティングをして貰いましょう。
購入店には販売した責任がありますので、何回でもやり直しさせましょう


当店販売のメガネは、お客様がご納得するまで何回でもやりますので
ご遠慮なくお申し付けください。



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テンプルの開き調整

メガネ修理で多い事例は、ネジ緩み、クリングス(鼻パッド足)の曲がり、テンプルの開きでしょうか。

前々回のブログ記事のエントリーに書いた通り、テンプルの開き調整は、
曲がった場所やその量によって修理の方法は変わります。

例えばよくある事例として、
「テンプルがガバッと開いてしまった。」

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これを応急処置しようとして、
ブリッジ部分で内側に曲げ込んでテンプルの開きを修正しようとする力技をされるかたがおられます。
時々持ち込まれるのですが、これは不具合の場所を増やすだけですのでおやめください。
ブリッジをこの方向に曲げるとロー付け部分が折れることもあります。

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テンプルの開きも、よく見ると、曲がっている場所が異なります。

テンプルの外側への圧力が、前枠のリム部分を内転させ、テンプルが開くというもの。
一個智や割り智という固い削り出し智で良く起こります。

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これはプライヤーで智を挟んでリムを戻すことで直します。
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そして、「智」と呼ばれる前枠とテンプルを繋ぐ部分が曲がる場合。
L智という曲げ智で良く起こります。

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L智で曲がった場合は、前々回ブログ記事に登場する、このプライヤーで挟み、握り込むことで曲げていきます。

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力を入れすぎるとこの通り。

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前々回のブログ記事で書いた「握り潰し」です。
L智で、厚くて固い材質で出来ている時に起きやすく、
力を徐々に加えていってもなかなか曲がってくれないのですが、
あるときに突然クニャッと逝ってしまいます。
限界となる閾値を超えた瞬間なのでしょう。
そうならないように、ストッパーを掛けながら握り込んでいきます。
この微妙な力加減は、何個も握り潰して、指で覚えるしかありません。



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ロウ付け台

ロウ付け(ロー付け)台を新しくしました。

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ロウ付けというのは、金属フレームの接合部が折れたときに修復する技術で、
従来ならば、眼鏡技術者の必修の基本的な技術です。
マイクロトーチ(小さなガスバーナー)でロウを溶かして、接合部をくっ付けます。
しかしながら、金属フレームの素材がチタンになってからは、ほとんどやる機会がなくなりました。

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チタンフレームの場合、空気中でロウ付けしようとすると、表面が酸化してしまい
銀ロウというロウ付け物質が素材表面に乗りません。
チタンフラックスとチタン用ロウ板を使って、チタン材の表面に被膜を付けて、
その被膜同士をロウ付けすることで、一応、店頭での修理も出来ないことはないですが、
強度や見た目の面で具合がよろしくないために、まあ、やることはありません。

今なら、往復の輸送も含めて最短3日ほどで、レーザー溶接してくれる修理工場があるので、
そちらに頼んだ方が強度も見た目も良いです。
一度、店頭で余計なことをすると、修理工場に送っても修理不能になってしまう恐れもあります。



フレーム素材が、サンプラチナ、洋白、ニッケルクローム合金の頃は、
クリングス折れ(鼻パッドを付ける金属の足)や、蝶番のコマ折れなど、
それこそ毎日のように頻繁にやっていましたので、今でもやろうと思えば出来るはずです。


ただ、今回このロウ付け台を新調したのは、ロウ付け用というよりも、固定用です。

外箱はこんなでした。

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THIRD HAND TOOL

そう、まさに第三の手です。この役目が欲しかった。

紫外線硬化樹脂などを使って応急処置をする時に、
くっつけるものを両手に持ってしまうと、UVライトを操作できません。
これがあると、片方、もしくは両方を台に固定すれば、手が空きます。

拡大鏡も付いてますが、ダブルコンベックスの収差のひどい奴なので、
あまり使い道はないかと思われますが、
レンズを自分で入れ替えれば使えるようになるかもしれません。



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鼻盛りの練習

お客様より、使用中のメガネが、破損や古くなったとの理由で処分を依頼されることがあります。

まとめて産業廃棄物として処分するのですが、ただ捨てるのももったいないので、
加工や修理の練習材料にすることがあります。
ほとんどは鼻盛りの練習ですが。

鼻盛りは、実際は余りやることは無いです。
盛らないといけないケースは、幼児用、あるいは、海外製(欧州向け)のプラスチックフレームに限られるからです。
基本的に、鼻盛り無しには掛けられそうもないフレームは仕入れませんので、
当店では幼児向けにたまに行うか、金属足が折れたときに固定鼻に交換修理する事がある程度です。

で、むしろ、頻繁に行わない作業なので、たまにやっておかないと腕が鈍ってしまいますので、
こういう機会に練習しておさらいしているのです。
(失敗しても問題ないですし、失敗が経験に繋がります)

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踏んでしまって、両蝶番の折れたフレームです。
蝶番埋め込みで修理可能ではありますが、メーカーが前枠のみの出荷に対応しておりましたので、
費用と納期を考えて前枠交換することになり、この前枠は不要となりました。

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で、付いていたマッシュ型の鼻パッドは、食い切りニッパで外しました。

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断面をヤスリ、ゴム砥石、耐水ペーパー、バフで磨いて平らにして
左に2本足ガードを圧着して、右にアセテートの載せパッドを溶着しました。

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他にも、外したパッドを、いろんなパターンで他の練習用フレームに付けてみました。

これはアセテートやセルロイドフレームだから出来る事です。
アセトンと酢酸アミールの混合液で素材表面を溶かし、溶着しています。
アセテート、セル以外のプラスチック素材ではできません。

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当店には、TR-90という東アジア製の廉価材質のフレームは取り扱いがないので、
たまたま廃棄予定の箱に入っていたテンプルにクリングスを埋め込んでみました。
しっかり土台が埋まる深さまで穴を掘っておかないと、折れてしまうんですね。
2回ほど、圧着しようとしたらパキッと折れてしまいました。
3回目は慎重に深さを見ながら掘って成功しましたが、
やっぱりアセテートやセルに比べると扱いにくい素材ですね。



こういう記事を書くと、
他店で購入されたプラスチックフレームの鼻盛り依頼が来たりします。
が、過去にも書いておりますが、
メガネがズリ下がる原因は、ここじゃないことが圧倒的です

→ 鼻盛りの依頼

→ クリングスを付けて欲しい


まずは、テンプルの開き、耳の後ろの曲げ具合、マトモなフィッティングをしてもらってください。
これは、販売した店、販売員の義務であり責任です。

フィッティングの下手な従業員も多いと思います。
マトモなフィッティングになるまで、何十回でも何百回でもやり直させましょう。
そうすれば、少しは学習して巧くなっていくはずです。
店、販売員にとっても、良い勉強の機会になるわけですから、損は無いと思うのですが。




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