数年前より、物がズレて見えたり二重に見えたりと自覚症状を感じていた女性より相談を受けました。
2年ほど前に眼科を受診し、「斜視」あるいは「斜位」との診断を受けているようですが、
「おそらく頭の精密検査をしても原因はわからないでしょう」などという説明があり、
脳神経科への紹介は行われずに、「プリズム眼鏡で様子をみましょう」ということで処方箋をわたされたようです。
ただし、
「プリズムが合うかどうかわからない」「プリズムの度数が直ぐに変化するかも」などの
ネガティブな話だったため、その時は処方通りにプリズム眼鏡を作製するのを躊躇して、
今日に至っています。
さすがに、最近は複視が気になって来ていたところ、当店のHPを見掛けて相談に来られたとのことでした。
カバーアンカバーテスト、オルタネイトカバーテストで少々の上下斜位を確認できました。
プッシュアップで眼球のすべての方向の運動を確認しましたが、異常はまったく見られず、
眼科での見立て通り、脳や神経、筋肉の異常による視線のズレではなさそうです。
いわゆる「生理的なズレ」というものです。
単眼遮閉での屈折検査で
R=Sph-10.00D
L=Sph-9.50D Cyl-0.25D Ax135
の完全矯正を得ました。
ワース4灯計では、少しズレがあるものの正常。

偏光コの字検査では、2△の上下斜位が検出できました。
ワースも正常ですし、上下とはいえ2△の斜位なら、さほど大きな複視は感じないはずと思ったら、
偏光コの字視標が、徐々に左が上がっていきました。

左眼に4△Base.Upで一旦中和するも、またジワジワと上がっていきます。
5△、6△と上げていっても、さらに左が上がっていきます。
一旦、右が高くなる量を入れたいので思い切って9△を入れて様子を見ました。
最初は右が大きく上がっていたのですが、またジワジワと左が近づいてきます。
1時間以上、じっくりと時間をかけて潜在していた斜位を引っ張り出したところ、
8△以上、8.5△未満という量の上下斜位が検出されました。
もういちどオルタネイトカバーテストをしてみると、やはり大きく振れるようになっていました・
そして8△のプリズム付加で動きはほぼ止まりました。
上下斜位と内斜位は、長期間放置されていると、結構眼のほうが頑張って潜在させてしまうことが多いです。
たぶん、これが「プリズムの度数が直ぐに変化する」と言われる理由だと思います。
眼位が変化するのではなく、潜在していた量が徐々に現れてくるということです。
時間を掛けて全量を引き出してあげればそうそう変わらない、
というのは、私の40年の経験から得た知見です。

製作範囲外特注のレンズでしたので、お渡しは2週間後になりましたが、
作製したメガネの上から偏光板を掛けてコの字検査をしたところ、
左右ぴったり揃っていました。
測ったときと、お渡しするときの斜位量が違っていることは稀にあるのは間違いないですが、
今回はきっちり同じでした。
日変化や、斜位の増加や軽減などはある可能性があるので、
異常を感じたり、感じなくても定期的に拝見させてくださいとお願いして、
メガネを掛けたままお帰りいただきました。
これまでは車でカーブするときは、片目をつぶったりされていたようですが
これからはそんな危険なことをしなくても大丈夫です。
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1年半ほど前に、当店でメガネをお作りいただいたお客様から、
「
右目が見えにくくなった。(気がする)」というご相談がありました。
手で、左右眼を交互に塞いで左右眼の見え方を比較すると
右目が見えにくいことが多い、とのことでした。
使用中の眼鏡は
R=Sph-7.00D
L=Sph-8.00Dです。
本日の両眼の完全矯正値は
R=Sph-7.75D Cyl-0.25D未満 Ax25
L=Sph-8.75D Cyl-0.25D未満 Ax130でした。1年半前とほぼ変わりません。
乱視は0.125D以上0.25D未満なので入れていません。
そして、1日中パソコンを見るようなお仕事なので、弱めに調整してあります。
結論として、両眼のバランスはちゃんと取れていました。
バランス用の視標を偏光板を入れて見ていただくと
むしろR ≧ L 、若干ですが右のほうが良いということになり、
ご納得いただけました。

偏光板を右45°、左135°に入れ、両眼バランス視標を見ていただくと
右眼で上段と中段、左眼で中段と下段が見えます。
両眼開放下(両眼融像下)で左右の同時比較が出来るということです。
片眼を遮蔽すると、調節が喚起されることがあり、正確な比較は出来ません。
このお客様の場合、効き目が左ということもあって、
反利き目眼の何となくの見え難さに、
利き目の眼前に手のひらを置いたことで調節が喚起されたかたちで、
見え難さが増強されたのだと思われます。
(調節の喚起で近視化する)
眼鏡度数の決定の際に、
遮蔽板で右目と左目を交互に遮蔽して
「どっちが見えますかぁ~?」などとやるシーンがあったりしますが、
はっきり申し上げて
何の役にも立ちません。視野の欠損の確認とか、暗点の有無とか、オルタネイトカバーテストとか、
他の目的で行うことであれば意味はあります。
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過日のことですが・・・
「今から行っても良いですか?」と女性から電話がありまして、
ほどなくして笑顔の印象的な女性が来店されました。
まずは主訴をお伺いしますと、
・年々目が乾いてきてコンタクトレンズが辛くなってきた
・メガネで生活したい
・夜間の自動車の運転ができるようなメガネが欲しい
・仕事で1日パソコンを見ているこんなところでしょうか。
掛けているメガネを拝見しますと
R=Sph-4.00
L=Sph-4.25D Cyl-0.50D Ax →何本かあるうち、これが一番マシということで、これを掛けて来店されました。
コンタクトは先週の金曜日以来使っていないとのこと。(スペクタクルブラーの影響はほぼない)
ランドルト環は単眼複視状態で、一応矯正視力は0.7が見えるかどうか。
で、単眼遮閉屈折検査から両眼視機能検査を経て両眼開放屈折検査の完全矯正値を得ました。
R=Sph-4.25D Cyl-3.00D Ax173
L=Sph-4.75D Cyl-2.75D Ax12眼位は、コの字、時計は正位、十字がやや外斜気味で感覚神経性変化が疑われましたが、
立体視の諸検査は正常だったので問題なしと判断しました。
うーん、クロスシリンダーテストは生まれて初めての経験だそうです。
ご使用中のフレームが、銀河鉄道のような名前の高級ブランドなフレームでしたので、量販店で購入したものではありません。
クロスシリンダーをしないとか、3.00Dもの乱視を無視するとか、
フィッティングをした形跡もなくズリ下がるとか、
もう全くアンビリーバボーなんですが・・・
で、その前にも量販店でお作りになられたそうですが、
見えにくいと相談したら、「眼科の処方箋を持ってきたら交換する」と言われたそうです。
が、平日に仕事を休んで眼科に行くわけにもいかずに諦めたとのこと。
もっとも、眼科で処方を受けたところで、どうにもならんと思うのですけれどね。
「見えにくい」→「処方箋を持ってこい」→「慣れろ」→「どーすりゃえーねん!」お決まりのパターンです。
まあ、そんな店があるおかげで(多いおかげで)
当店のような、場末の、胡散臭い店にも生き残れる道があったりするわけですけれど。
まずは完全矯正値と、現状のメガネを掛け比べて、見え方の違いを理解していただき、
「本来は完全矯正値に近い度数にしたいけれど、いきなりは無理でしょうから、
良好な見え方と、空間の違和感との妥協点を探しましょう」
ということで、弱い度数から徐々に上げていって
見えやすくなってくると違和感が増えてくる、ということも納得していただいて
1時間以上装用テストを繰り返しました。
時間を掛けて装用テストをしているうち、乱視の違和感には慣れてきたようで
最終的に
R=Sph-3.25D Cyl-3.00D Ax173
L=Sph-3.75D Cyl-2.75D Ax12としました。
パソコン仕事をされているので球面値は弱めです。
遠見視力は0.8p程度ですが、単眼複視はないので
これまでに比べたら快適に見えるということです。
いきなりの乱視の完全矯正はちょっと不安はありますが、
ご本人の
「きちんと見たい」という意思を尊重してこうなりました。
まぁ、プランBも用意しているので、ひと月ほど様子を見て、慣れないようなら再来店をお願いしました。
当店は、逃げも隠れもしませんし、納得いくまでお付き合いいたします
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Edward Jackson氏のことを調べていると、こんな古い文献が見つかりました。
The Cross Cylinder Method1919年発行のoptometrist向けの業界紙のようです。
1919年と言えば、行く行くヴェルサイユ条約、行く行くワイマール憲法とか、
中学生の頃に語呂で覚えた歴史年表を思い出しますが、
日本では大正8年、何があったのか検索してみると、カルピスが販売開始だそうです。
三菱銀行、オリンパス、大和運輸も設立の年のようですね。
それはさておき・・・
こんな一文がありました。
"Golden rules of Refraction" says:
"Cross cylinder, as soon as they are well known, will be universally used."
屈折の黄金の法則は、クロスシリンダーを良く知れば、宇宙で使われるであろう
こんなニュアンスでしょうかね。
宇宙人が使っているかはともかく、クロスシリンダーはとても画期的で、素晴らしい発明であることは間違いありません。
150万円ほどするオートレフラクトメーターよりも、
1本3,000円ほどで手に入るこのクロスシリンダーのほうが有益だと思います。
オートレフが無くても仕事はやれますが、クロスシリンダー無しでは出来ません。
雲霧法と乱視表を使うという方法もありますが、クロスシリンダーのほうが圧倒的に高い信頼性を持って検査できます。

私が所有している4本のクロスシリンダーです。
どれも買ってから30年は経っていると思います。
一番下が±0.50Dで、それ以外の3本は±0.25Dです。
軸の長さや太さが微妙に違うので、3本とも違うメーカーのものだと思いますが、
真ん中のやつが一番使いやすくて、さらに滑り止めのシリコンゴムを取り付けたらさらに使いやすくなったので
現在はこればかり使っております。
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拙ブログにしばしば登場する「クロスシリンダー」

±0.25Dと±0.50Dの2種類が市販されています。
私の場合、普通の使い方(乱視軸度と度数の追い込み)をする場合、ほとんど±0.25Dを使います。
普通じゃない使い方もあるのですが、その時は±0.50Dのほうも使います。
この使い方は普通じゃないので公開はしないほうが良いでしょうか・・・
オートレフやレチノスコープが使えず、他覚的屈折度数値がわからないときに使う奥の手です。
±0.25Dのクロスシリンダーですが、正体はSph+0.25D Cyl-0.50Dの混合乱視のレンズです。
そのレンズの主経線の中間の方向に反転用のツマミが付いたものです。
反転させることによって、反転前後の網膜上の最小錯乱円の大きさを比較します。
その結果、乱視軸は1.25度(あるいはその半分)くらいまで、乱視度数は0.25D単位で追い込めます。
±0.125Dのクロスシリンダーを自作すれば、0.125D単位まで調べられますが、
岡本式クロスシリンダー有る無し法を使えば、±0.25Dのクロスシリンダーでも0.125D単位まで調べられます。
クロスシリンダーを持ち換える必要もなく、
手数を減らし効率的にクロスシリンダーを行えるのでこの手法は重宝します。
岡本式クロスシリンダー有る無し法では、さらに0.0625Dまで追い込むメソッドはありますが、
そういう単位のレンズはメーカーが製作していませんし、
そもそも被検者が、そのわずかな違いを判断できない可能性が高いので、
通常はそこまでやることはありません。
さて、この1本3,000円ほどで手に入る超優秀なツールであるクロスシリンダー、
どこで誰が発明したのか?
「Jackson's closs cylinder」とも呼ばれますので、Jacksonさんなのは容易に想像できますが、
どこのJacksonさんなのかまではさっぱりわかりませんでした。
いろいろ調べると
Edward Jacksonさんのようです。
しかし
wikipediaには記載されておりません。
そして、このページにたどり着きました。
Edward Jackson, MD--a historical perspective of his contributions to refraction and to ophthalmologyエドワードジャクソンさんは、1942年10月29日に86歳で亡くなり、
主要な眼科組織の会長を務め、コロラド大学の眼科の教授兼会長を務めたとのこと。
米国眼科学会の主な創設者などいろいろと偉業を成し遂げたかたのようです。
1885年、レチノスコープを普及させて実用的な屈折測定ツールにして、
その2年後にクロスシリンダーで乱視の有無を調べられることを証明して、
1907年にクロスシリンダーでの検査法を確立したということのようです。
700を超える論文、および本を幅広く講義および執筆し、出版されたようです。
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